ハマりやすい落とし穴【胸膜炎の鑑別】

 こんにちは、もな(@ttfxbjgckkdetnc)です。

今回は5月11日に出題したこの問題についてコメントしたいと思います。

胸膜炎の鑑別

胸膜炎はその名の通り胸膜に炎症が起こっている状態ですね。

原因としては肺炎に続発する細菌性胸膜炎結核性胸膜炎、悪性胸水が貯留した癌性胸膜炎、関節リウマチが代表的な膠原病性胸膜炎などが挙げられます。

これらの多くは滲出性胸水を伴うため、胸水所見はこれらの鑑別に重要になってきます。

鑑別ポイントの整理

問題文から鑑別のポイントとなる所見を取り出していきましょう。

1週間前からの咳嗽

まずは主訴です。大切なOnsetについての情報があります。

「1週間前からの咳嗽」ということで、それ以前の既往歴などの情報がないため詳しい経過は分かりませんが、急性の経過をとる疾患かなと推測はできます。

悪臭を伴う淡黄色の胸水

「悪臭を伴う」ことから何か壊死や感染が起きているのではないかと考えられます。

※国試的には「悪臭を伴う」ときたら嫌気性菌の感染がパッと頭に浮かぶかもしれません。

また「淡黄色の胸水」ということで、血性(橙色濁)の外観を呈することが多い胸膜中皮腫は考えにくいですね。

多形核球優位の滲出性胸水

多形核球優位な有核細胞の増加を認める滲出性胸水の所見に最も合致するのは選択肢のうち膿胸でしょう。

細菌性肺炎が胸膜に波及して肺炎随伴性胸水を呈したと考えられます。

(胸水中の)ADA高値

これに引っ張られて結核性胸膜炎を選んでしまった人が多いですね。ピットフォールですよ!

確かに胸水中のADA高値は結核性胸膜炎で有名な所見ですが、胸水中のリンパ球優位な有核細胞の増加と合わせて結核性胸膜炎を示唆する所見です。

また膿胸や胸膜中皮腫膠原病性胸膜炎、悪性リンパ腫でも上昇することがあるため、単なる補助診断の1つであることに注意する必要があります。

 

これら所見をまとめると最も可能性が高い疾患は(嫌気性菌による)膿胸となります。(正答率25%)

まとめ

最近の医師国家試験の傾向として、どの検査所見が疾患を最も疑わせる所見なのか選ばせるような問題が出題されています。

「Congo-red染色といえばアミロイドーシス」みたいな1対1対応の所見だらけだったらいいのにって思いますが、おそらくこのような問題は減っていく傾向なのでしょう。

有名な検査所見は疾患と1対1対応と勘違いしてしまい盲点になりがちなので、問題を解く時は臨床像全体からしっかり考察するようにしたいですね!

もな

 

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