急がば回れ【感染性心内膜炎】

こんにちは、もな(@ttfxbjgckkdetnc)です。

今回は6月8日に出題したこの問題についてコメントしたいと思います。

診断は?

76歳男性。2か月前から続く倦怠感、微熱、食欲不振を主訴に外来を受診。体温37.6℃、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧140/80mmHg。聴診で心尖部領域に全収縮期雑音を聴取した。手指に爪下線状出血がみられ、経胸壁心臓超音波検査で僧房弁に付着する疣贅を認める。神経学的所見で明らかな異常はない。血液培養を採取した後、入院となった。

「手指の爪下線状出血」「経胸壁心臓超音波検査で僧房弁に付着する疣贅」から感染性心内膜炎の診断はすぐつくと思います。

また「聴診で心尖部領域に全収縮期雑音を聴取」とあるので、僧帽弁閉鎖不全症の既往があることがわかります。

時間経過や主訴、バイタルサインなどから全身状態は比較的安定していることが読み取れればOKでしょう。

感染性心内膜炎〈IE〉とは

感染性心内膜炎(以下IE)は、心腔内にジェット血流を生じさせるような器質的心疾患を背景に、心内膜に形成された血栓に細菌などが付着することで菌血症や弁破壊による心不全を起こすことが主な病態です。

IEはまれな疾患ですが、適切な治療が行わないと塞栓症や膿瘍形成などさまざまな合併症を引き起こし致命的になりうる疾患です。

原因菌は急性の経過をとる黄色ブドウ球菌、亜急性の経過をとる口腔内の緑色連鎖球菌腸球菌といったグラム陽性球菌が中心となります。

治療アプローチについて

IEの治療は抗菌薬による内科的治療がメインですが、治療は数週間単位の長期になることが多いため、できる限り原因菌にのみ有効な狭域スペクトルの抗菌薬を選ぶ必要があります。

つまり、IEなるべくempiricな治療を避けるべき疾患であり、患者の呼吸循環状態が安定している場合は原則として血液培養の結果を確認してから抗菌薬を開始します。

本問は僧帽弁閉鎖不全症の既往のある患者に発症した感染性心内膜炎ですが、来院時の全身状態が悪くないことから「培養結果が判明するまで抗菌薬の開始を待つ」が答えとなります。(正答率11%)

まとめ

一般的な感染症ではまずempiric therapyを行い、起因菌が判明してからde-escalationをを考えますが、感染性心内膜炎の治療アプローチがこれと異なるため出題しました。

急がば回れ、たまには好機をじっと待ってみるのも大切ですね。

感染症の治療は盲点となりやすい部分が多いので(有名どころでいうと110B57「MRSAが検出されただけでは治療しない」)、病原体に対する抗菌薬選択だけでなく治癒までの流れを確認しておきましょう。

もな

 

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